ネットを騒がせる陰謀論

ネットの世界は常に怪しげな陰謀論や都市伝説、真偽不明の暴露話が飛び交い混沌とした状態ですが、個人情報や他人の名誉を毀損するような書き込みを処罰する法的整備が進んでいるせいか、以前に比べると悪質な投稿は減ってきているような気がします。とはいっても表現・言論の自由の保護との兼ね合いもありますから、名誉毀損に該当しないレベルの批判や暴露は許容されている感じですね。個人的にネット上の根拠の無い出所不明の噂や陰謀論はスルーするようにしていますが、ネットを使い始めた頃は眉唾情報に惑わされる事もありました。少し前に世界を騒がせ、日本でもブーム(?)を巻き起こした陰謀論と言えばアメリカの共和党を支持する謎の組織「Qアノン」と、Qアノンが世界に発信したアメリカ政界とハリウッドエンタメ業界に纏わるスキャンダル話ではないでしょうか。内容的には、アメリカ民主党の重鎮やハリウッド業界の大物が組織的に児童への性的・身体的虐待を行っている、共和党のトランプ氏がその悪行を止めさせる救世主だ、といったものです。実際に児童誘拐・虐待で逮捕された富豪の名を挙げて、その富豪と共に多くの民主党系セレブが児童虐待に加担していたと主張し、それは忽ちネットを通して世界中に広がりました。とはいっても世界の反応は「大統領選絡みのキャンペーンだろうな」といった冷めたもので、まともに取り上げるマスコミは殆ど無かったようですが。私も「またか」みたいな感じでスルーしていましたが、陰謀説としては世人の関心を上手く引き付けられるように設計しているなと思いましたね。実際の事件を部分的に取り入れ、以前から巷で噂されていたハリウッドの児童へのセクハラスキャンダルや悪魔崇拝を織り交ぜ、誰もが知っている多くの著名人をそこに結びつけている。ゴシップニュースに関心の無い人でもちょっと閲覧したくなってしまうような内容になっています。Qアノンの陰謀論に関係なく政界やハリウッドではセクハラや児童虐待がかなりの頻度で発生していると言われており、それは世界中が知っている事です。Qアノンはそのグレーゾーンに脚色を施して利用し関心を引こうとした。ハリウッドには民主党支持者が多い事も関係しているでしょう。結局アメリカ大統領選では民主党のバイデン氏が勝利し、同時に共和党応援団のQアノンの活動も鳴りを潜めましたが・・。Qアノンが登場する少し前からハリウッドでは業界内の様々なハラスメントを公然と糾弾する抗議活動「Me too」が生まれ、大物俳優や大物プロデューサーが過去のセクハラパワハラを暴露され失脚に追い込まれています。今まで我慢していた人達が声を上げ始めた。Qアノンはその兆候を捉え、その流れに便乗したのかもしれません。余談ですが、ハリウッドに「Me too」の流れが生まれたのはハリウッド業界自体の影響力・パワーがもはや落ち目になりつつあるから、という側面があるからなのかもしれません。現在の世界のエンタメの主役はネットであり、ハリウッド映画は数あるネットコンテンツの一つに過ぎなくなった。だから弱い立場の人間が声を上げ易くなったとも考えられます。本当にパワーと金が集まる最盛期の業界のセクハラパワハラは、人権主義や政争の圧力があったとしても滅多に外には漏れてこないのではないか・・という気がしますね、残念ながら。