選挙の前に

一昨日の7月8日に、元総理大臣で衆議院議員安倍晋三氏が奈良市内で街頭演説中に男に銃で狙撃され、出血多量により死去しました。享年67歳でした。犯人は奈良市在住の無職の41歳の男で、元海自臨時隊員。その場で警察官達やSPに取り押さえられて逮捕されました。その後の警察による取り調べで、ある宗教団体に対して個人的な恨みを持っており、安倍氏とその団体が親密な関係にあると考えて犯行に及んだと供述しているそうです。動機の詳細については今後の捜査や取り調べで更に明らかになって行くと思われます。
政府の要人が襲撃される事件は戦前から時々発生していますが、政治家側の防衛策は殆ど無い状態で、自爆テロとも言えるような固い殺意を持った人間を防ぎながら政治家として活動する事は不可能に近いでしょう。唯一の逃げ道は政界から引退して権力の座から離れる事ですが、それは民主主義の崩壊を招く事になりかねない。
今回の狙撃犯も、犯行動機は宗教団体への個人的な恨みが原因であり政治思想的な動機ではないと供述していますが、思想言論弾圧を目的とする公人の殺害となると量刑が重くなるので、動機を宗教団体との金銭トラブルに起因する個人的な恨みにすり替えて主張している可能性もあります。あるいはその両方が動機だが、個人的な恨みの方だけを強調しているという事も考えられます。被疑者の背後関係も気になります。今後の捜査で事件の全容が早急且つ細部まで解明される事を願っています。
自民党最大派閥のトップである安倍元総理の死去によって自民党内の派閥再編成が進むのではないかといった見方も出ています。安倍氏は67歳、世間一般では高齢者ですが政界引退にはまだ早い年齢でしたし、引退後のプランも固まっていなかったのではないかと思います。後継者が指名されていないので安倍氏と思想的に近い側近議員同士の主導権争いとなりそうです。ただ、イヤな言い方ですが「悲劇」「非業の死」というダメージを受けた集団に対して国民は同情的ですし、激励したい気持ちもありますから、今安倍派を離れるのは得策ではないと考える議員もいるような気がします。ですから安倍派は当分の間は分裂せず、結束を強めてゆくのではないかという気がします。