食事と嚥下機能

※人体の構造についての記述を含んでいる記事なので、そうした内容が若手な方はスルーして下さい。

 

時々、幼児や小児、あるいは高齢者が食事中に喉を詰まらせて窒息死というニュースを目にしますが、食べ物等が喉に詰まって窒息するといった事故は決して子供や高齢者に限った話ではありません。青年~壮年期の健康な人間であっても発生するリスクは十分にあります。食物を飲み下す嚥下カや食べ物や空気の通り道である食道の内径には個人差がありますから、食材や食べ方によっては若くても喉を詰まらせて窒息死する可能性は常にあります。以前に海外のニュースで10代の若い男性がチキンを食べている途中で喉を詰まらせ、殆ど呼吸が出来なくなり、緊急搬送で病院で治療を受けたものの酸欠状態が続いた為に脳に後遺症が残ったというケースを見ましたが、男性は健康で持病も無かったとのことでした。「食べる」という行為は生きる楽しみであると同時にリスクを伴う・・そんな事は誰でも自覚していると思いますが、あまりに日常的な行為なので警戒心が緩んでしまっている場合が多いのではないかと思います。私も中高年世代になってから嚥下カが弱くなったなと自覚するようになり、食材によっては細かくカットするようになりました。年を取ってしまったなぁ・・と実感しています。食道(食べ物を喉から胃に送るホースのような器官)の内径は、日本人の場合成人で平均20mm~30mm程度で弾力性はあるものの、結構細いイメージです。成人の食道の長さは平均で25㎝です。食道は食事以外の時は紙袋を畳んだように内部の空洞が狭まっている状態ですが、水や食物を胃に送る時に2~3cmの幅に広がります。水や食物が食道を押し広げて胃に落下して行くような感じです。直径2㎝~3㎝ほどのホースの中に食べ物を流して行くようなものですから、年齢に関係なく途中で詰まってしまうケースがあるのも頷けます。高齢者は加齢によって嚥下機能が低下しますし、幼児や小児はまだ飲み下す力が弱いので窒息死のリスクが高まります。その為、食事の際はまず水等の液体を飲んで食道内の粘膜を潤し、食道の筋肉をウォーミングアップさせてから食事をする事が望ましいとされています。よく噛んで食材を消化し易い形状にしてから飲み込む、口一杯に頬張らずに適量ずつ口に入れる、時々水やお茶を飲んで食物の喉通りを良くする、といったことは子供の頃によく注意されたという人も多いのではないかと思います。食べ物による窒息は食道だけではなく、食道の途中で連結している気管(肺に空気を送るホース状の器官)に食べ物が入り込む事でも発生します(誤嚥)。通常、水や食物が食道を通る際には気管との連結部は塞がる構造になっているのですが、何かの拍子に誤って水や食物が気管に入ってしまう事はよくあります。急いで水やジュースを飲んだ時、むせてしまって咳き込んだ経験は誰にでもあると思います。気管の内径は成人男性で18mm、成人女性で15mm程度です。1歳児の気管の内径は5mm、5歳児で10mmです。水や食べ物が肺の気管に入ってしまう誤嚥は高齢者や子供に多く、特に乳幼児や小児は気管がまだ狭いので食事を与える際には気管内径の数値を意識しておいた方が良いかもしれません。 何となく食べ易いように食材を細かくカットするのでは無く、食道や気管の構造や内径の数値を頭に入れておけば、窒息を予防する事を意識しながら食材を調理、飲食する習慣が身に付くようになるのではないかと思いますね。