台湾有事と日本の国防

先日、アメリカのペロシ衆議院議長が公的に台湾を訪問したニュースが大きく報じられていました。当然中国は激しく非難し、直ぐに台湾とアメリカを牽制する為の軍事演習を開始しました。正直、アメリカの台湾への関与の仕方は無責任且つ一貫性が無いと思いますが、アメリカは「わざと挑発的な、あるいは逆に曖昧な対応をして中国に揺さぶりをかける」というのがお決まりのスタンスですから、いつもの手法だなという感じですね。ただ、もうそういう段階ではないのでは、という気がします。台湾はいずれ中国に吸収され、19世紀以前の様に「台湾省」となるでしょうし、それに対してアメリカは何も出来ないでしょうし、そうしたアメリカを非難する国も無いでしょう。国連やアメリカに出来る事があるとすれば、中国が平和的に台湾支配を行うよう要求し、国連の監視団を送り込んでその経緯を監視出来るような環境を整えることくらいでしょう。台湾は元々はポリネシア系の先住民が島内各地で分散居住し、その後中国本土からの移民が増え、やがてアジアに進出してきた欧米列強の植民地となり、その後中国系と先住民系の武力蜂起によって欧米勢力を駆逐し、紆余曲折を経て中国(清国)の領土となります。中国領となってから約200年間、先住民と中国系住民・支配者の間で抗争や反乱が続きながらも中国系と先住民系の混血や文化的な融合が進み、台湾は民族的にも文化的にも中華圏に属するようになったと言えるでしょう。台湾人の母語は中国語ですし、現在の台湾人の95%以上は漢民族ですから、多くの人は「自分のアイデンティティーは台湾だが、ルーツの一部は中国だ」という意識を持っています。同時に中国も「台湾は漢民族の島なのだから中国領だ」と考えています。そうした背景を考えれば、政治体制は大きく異なってはいますが、同じ漢民族で圧倒的な軍事力を有する中国がいずれ台湾を支配下に置く可能性は高く、その流れを止める事は出来ないでしょう。海洋進出は中国の悲願でもあります。ただ、そうなると日本も軍事的に重大な危機に直面する事になります。台湾が中国の一部となれば、尖閣諸島を占領される可能性が高くなり、やがては沖縄に侵攻してくるかもしれません。アメリカは日本の為に血を流す事はしない、中国はそう分析するのではないかと思うからです。アメリカ国内の世論は素人でも予想出来ます。テロや人種差別、経済格差といった多くの問題を抱えている状態で外国への派兵など国民が許さないでしょう。しかも元敵国の日本の為に出兵するなんて絶対反対!大国の中国と戦争なんてしたくない!といった意見が主流となるでしょう。日米安保条約に基づく軍事行動はアメリカ議会の承認が必要ですが、承認されない可能性が高い。そしてその可能性は年々高くなってゆくでしょう。なぜなら、アジアに全く何の関心も無いヒスパニックや黒人系の人口が今後急増するだろうからです。これからのアメリカは彼ら非白人系の意見に大きく左右されることになる。日米安保条約が形骸化するのは避けられません。在日米軍は「有事には日本を支援する」という欧米の姿勢を象徴し、対中・対ロシア牽制の役割をある程度果たしてきましたが、実行力が伴わない空洞化した軍事同盟だと見なされれば、その効力も消滅します。万一、中国が沖縄を攻撃してきたら、あるいは北朝鮮島根県鳥取県や京都、佐渡島を侵略して来たら、ロシアが中国や北朝鮮の動きに呼応して北海道を侵略してくる可能性も高まります。万一の事態に備え、アメリカと連携して沖縄県と北海道に核兵器を配備し、沖縄県民を日本各地に避難させるというシミュレーションもしておかなくてはならない・・まぁ、そんな事はとっくに政府内で検討されていると思いますが。個人的に核兵器の配備には反対なのですが、戦争になってからでは遅い。抑止力として使えるものなら何でも使う。そうするしかないと思います。ウクライナの惨状を見ると、そう思わざるを得ません。
台湾有事に備えて核配備を行い、それを担保に日本国内のアメリカ軍基地を縮小し、台湾有事には軍事介入せず、アメリカの台湾有事時の軍事行動への協力も最小限に留める、という方針が最良ではないかと思います。結果として台湾が中国領になったとしても、日本が核兵器を配備している状態ならば中国の侵略を抑止する能力を一定程度維持できると思われます。その上で中国と和平条約を締結し、緊張関係を緩和出来れば永続的な和平関係を築ける可能性もあります。核兵器を盾にして米中の紛争に深入りしなければ、その後の中国との交渉もし易いですし、一方でアメリカとも一定の距離を置きつつ軍事同盟を維持する。その頃にはアメリカは黒人とヒスパニックの国になっているので日本が多少離れたとしてもさほど気に留めることもないでしょう。米中間の紛争に巻き込まれずに上手く生き延びるのは難しいですが、不可能な事ではないと思いますね。